透析クリニックで働いていると、患者さんとの距離の近さに戸惑うことがあります。
週3回、何年も同じ方と顔を合わせます。
ご家族のこと、仕事のこと、趣味のこと。
気づけば、かなり個人的なことまで知っている関係になっています。
これは透析看護のやりがいでもあるのですが、
近いからこその難しさも確かにあります。
この記事では、透析クリニックで10年ほど働いてきた私が、
患者さんとの距離感で難しいと感じてきたことを、そのまま書いてみます。
病棟とは「難しさの種類」が違います
まず前提として、病棟時代と比べて関わり方そのものが違います。
病棟は、短い期間で深く関わります。
状態が変化していく中で密に接して、退院という形で区切りがつきます。
透析は逆です。
一度の関わりは浅くても、それが何年も続きます。
そして基本的に、区切りがありません。
だから病棟でやっていたような割り切り方が、そのままでは通用しません。
「この期間だけ」と思えないぶん、関係の作り方を長い目で考える必要があります。
難しさ① 水分制限や体重増加を注意するとき
透析看護師の役割のひとつに、自己管理のサポートがあります。
体重が増えすぎていれば、それを伝えなければなりません。
ただ相手は、何年も一緒に過ごしてきた方です。
言いにくさは、正直あります。
患者さんによって伝え方を変えています
私は、その方に合わせて対応を変えるようにしています。
1回目は、まず優しく伝える
自己管理が難しい方でも、いきなり強く言うことはしません。
体調や事情があるかもしれませんし、頭ごなしに言われて響く人はいないと思うからです。
続くようなら、リスクをはっきり説明する
毎回続く場合は、伝え方を変えます。
体重増加が続くと体にどんな負担がかかるのか、具体的なリスクとして説明します。
遠慮して伝えないほうが、結果的にその方のためになりません。
医師から伝えてもらったほうがいい場合は、医師に相談する
看護師が何度言っても変わらないのに、医師の一言で変わることがあります。
自分が言うことにこだわらないのも、大事な判断だと思っています。
関係が近いぶん、こちらが言うと「またか」と受け取られてしまうこともあります。
そういうときは、伝える人を変えたほうが届きます。
そして、頑張れたときは全力で褒めます
これが一番大事かもしれません。
体重がうまくコントロールできていたとき、スタッフみんなで、すごく褒めます。
自己管理は毎日のことです。
水分を我慢するのは、想像以上にしんどいことだと思います。
注意されるばかりだと、誰でも嫌になります。
できたときにきちんと伝えることで、次につながっていく気がしています。
難しさ② 穿刺を指名されるようになったとき
透析では、患者さんが穿刺してほしい看護師を指名することがあります。
私も年数を重ねるうちに、指名していただくことが増えてきました。
信頼してもらえているということなので、率直に嬉しいです。
ただ、これはこれで難しさがあります。
自分が休みの日はどうするか
当然ですが、毎回自分がいるわけではありません。
指名が固定化してしまうと、その方が不安を感じる場面が増えてしまいます。
「今日はいないのか」と落ち着かない気持ちにさせてしまう。
だから信頼してもらえるのは嬉しい一方で、
自分に依存しすぎない関係のほうが、その方のためになると思っています。
他のスタッフとの関係
指名されるということは、裏を返せば指名されない人がいるということです。
特に新人のうちは、これがつらいと思います。
私も最初はそうでした。
ただ、これは技術だけの問題ではありません。
患者さんは「この人は自分をよく見てくれているか」を見ています。
だから指名される立場になったときこそ、
後輩が任せてもらえるように橋渡しをすることが大事だと感じています。
「今日はこの人にお願いしますね、大丈夫ですよ」と一言添えるだけで、変わることがあります。
難しさ③ 患者さんを見送るとき
これが、いちばん書きにくいことです。
透析は長く続く治療です。
そのぶん、患者さんの状態が徐々に変化していくのを、そばで見続けることになります。
ある日突然ではなく、少しずつ。
数値が変わっていく。
歩き方が変わる。
来院の間隔が空くようになる。
そういう変化を見ながら、それでもいつも通りに接することになります。
正直に言うと、10年経っても慣れません
よく「慣れましたか」と聞かれますが、慣れないままです。
長く関わってきた方ほど、そうです。
ご家族のことも、その方の生活も知っているからだと思います。
これは慣れるべきことなのか、今もよく分かりません。
ただ、慣れなくてもいいのかもしれないとは思うようになりました。
その日も、透析は続きます
つらいのは、そこで立ち止まれないことです。
同じフロアには、他の患者さんがいます。
その方たちにとっては、いつも通りの透析の日です。
だから平常を保つしかありません。
普段どおりに声をかけて、普段どおりに穿刺をします。
この切り替えは、今でも簡単ではありません。
支えになっているのは、スタッフ同士の会話です
気持ちの整理でいちばん助けられているのは、スタッフ同士で話すことです。
透析室のスタッフは、同じ患者さんを長く見ています。
説明しなくても分かってもらえる相手がいるのは、大きいです。
一人で抱えないこと。
これは技術以上に大事なことだと思っています。
だからこそ、こういう話ができる職場かどうかは、働き続けるうえでとても重要です。
近いから苦しい。でも、近いから続けられる
ここまで難しさばかり書いてきましたが、
この距離の近さが、透析看護のやりがいそのものでもあります。
小さな変化に気づける。
体調が良くなっていく過程を、一緒に喜べる。
「あなたに刺してもらうと安心する」と言ってもらえる。
これは、長く関わっているからこそのことです。
苦しさとやりがいは、同じところから来ています。
どちらか片方だけを取ることはできません。
もし今、患者さんとの距離感で悩んでいる方がいたら、
それはちゃんと向き合っている証拠だと思います。
まとめ
透析看護師と患者さんの距離感について、正直なところを書きました。
・病棟とは難しさの種類が違う
・注意するときは、相手によって伝え方を変える
・頑張れたときは、きちんと褒める
・指名されるようになったら、依存させすぎない
・見送るときは、10年経っても慣れない
答えのない部分が多いテーマです。
ただ、一人で抱え込まないことだけは確かだと思っています。
透析クリニックの人間関係については、こちらでも書いています。
透析クリニックを選ぶときに確認したいことは、こちらにまとめています。




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